
1on1 とは
上司と部下が1対1で定期的に行う対話で、進捗確認ではなく部下の状態・成長・キャリアを扱う時間。
1on1(ワン・オン・ワン)は、上司と部下の定期的な1対1の対話です。多くの企業が導入していますが、「結局、進捗確認になっている」「何を話せばいいかわからない」という声も多く、形骸化しやすい仕組みでもあります。この項目では、定義、似た面談との違い、新人の定着に効く根拠、頻度と問いの設計を整理します。
意味と、似た面談との違い
1on1とは、上司と部下が1対1で定期的に行う対話で、業務の進捗確認ではなく、部下の状態・成長・キャリアを扱う時間です。「部下のための時間」であり、話す主体は部下、上司は聞く側に回ります。
1on1 と似た面談の違い
| 面談 | 目的 | 話す主体 | 頻度 |
|---|---|---|---|
| 進捗会議・報告 | 業務の状況を上司が把握する | 部下が報告、上司が指示 | 日次〜週次 |
| 評価面談 | 目標の達成度を評価し、処遇を決める | 上司が評価を伝える | 半期〜年1回 |
| 1on1 | 部下の状態・成長・悩みを扱う | 部下が話し、上司が聞く | 週次〜隔週 |
| キャリア1on1 | 4〜5年後のありたい姿と必要な学びを描く | 部下が描き、上司が支援する | 半期〜年1回+随時 |
進捗確認に流れる最大の原因は、上司側の準備不足です。「何か困っていることは?」と聞くだけでは、新人は「大丈夫です」と答えます。1on1には、上司が持つべき問いの型があります。
新人の定着に効く根拠
若年就業者227名を対象にした研究では、上司からのサポート——仕事で辛いときや辞めたいと思ったときに親身に相談に乗ってくれること——が、会社への愛着(情緒的コミットメント)を高める最も強い要因の一つでした(尾形真実哉『若年就業者の組織適応』白桃書房, 2019)。また同じ研究は、上司の発展的なフィードバック(良かった点と次に伸ばす点)が、新人が自らフィードバックを求める行動を引き出し、それが仕事の習得を促す「ポジティブ・スパイラル」を生むことを示しています。
1on1は、この上司サポートと発展的フィードバックを、偶然ではなく定期的に起こす仕組みです。特に新人は、勤続年数が浅いほど遠慮から自分では聞きに行けないため、上司の側から時間を確保する必要があります。
頻度と問いの設計
新人の最初の90日は、週1回・30分が基本です。90日以降は隔週、1年目の終わりからは月1回に落としますが、入社2年目に生じる停滞感(2年目の憂鬱)に備えて、2年目も月1回はやめません。
問いは、結果ではなく行動と次の一手を聞く形にします。
- 「今週、何をした?」「相手はどう反応した?」——結果の良し悪しではなく行動を振り返る
- 「次に同じ場面が来たら、何を変える?」——反省を教訓に変える
- 「今やるべきことを、自分の言葉で説明できる?」——役割の明確さを確認する
- 「困ったとき、誰に聞ける?」——周囲からの受容を確認する
- 「入社前の想像と違ったことは?」「思ったより良かったことは?」——ギャップと良い驚きの両方を拾う
30日・60日・90日のパルスサーベイの結果を1on1の入口に使うと、「点数が下がった設問について聞く」という形で会話が具体的になります。サーベイは1on1への入口であり、1on1がなければ数値に意味はありません。設計の詳細は1on1の設計、サーベイとの接続は新入社員向けパルスサーベイの設計で解説しています。
上司側の準備
1on1が機能するかは、上司の聞く力に依存します。話す割合は部下8:上司2を目安にし、沈黙を埋めない。部下の発言を評価せず、まず受け止める。「なぜできなかった」ではなく「何があった」と聞く。これらは訓練なしには身につかず、上司向けのトレーニングを先に行うことが、1on1導入の前提です。上司が1on1を「自分の仕事の一部」と認識しているかどうかは、新人が上司を観察して役割を理解する際の材料にもなります。
記録と共有
1on1は、記録が残って初めて時系列で見られます。「30日目に受容の点数が下がり、1on1で同僚との関係を聞いたところ、質問しにくい雰囲気があった。バディの定例を週2回に増やした」——このような記録が新人ごとに一つの時間軸に並んでいれば、上司が変わっても、人事が状況を把握するときも、経緯をたどれます。記録は上司の頭の中ではなく、上司・人事が同じ場所で見られる形にします。ただし、部下が話した内容をそのまま人事に共有すると本音が出なくなるため、「何を共有し、何を共有しないか」を部下と合意しておきます。
1on1で何を話せばよいかわかりません。
「困っていることは?」ではなく、行動を聞く問いから始めてください。「今週何をした?」「相手はどう反応した?」「次に同じ場面が来たら何を変える?」の3つで、進捗確認ではない会話になります。新人のパルスサーベイの結果を入口にする方法も有効です。
忙しくて週1回は無理です。
最初の90日だけは週1回・30分を確保してください。この期間の上司サポートが会社への愛着を決め、離職の多くはこの期間に意思が固まります。90日以降は隔週、1年目の終わりからは月1回に落として構いません。
部下が本音を話しません。
多くの場合、1on1が進捗確認や評価の場になっているためです。「話したことが評価に使われない」と明示し、上司が自分の失敗談を先に話し、部下の発言をまず受け止める。数回続けて「話しても大丈夫」という経験が積み重なると、本音が出始めます。



