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基礎・実践

新人との1on1の設計|オンボーディング期は「進捗確認」より「困りごとの回収」を優先する

週1回・固定の予定・議題の型。この3つがあれば「特にないです」で終わらない

公開日2026/09/10

「1on1はやっているが、新人は『特にないです』としか言わない」——オンボーディング期の1on1でよくある悩みです。原因は新人の口が重いことではなく、1on1が「進捗確認」になっていることにあります。オンボーディング期の1on1は、通常の1on1とは目的が違います。この記事では、入社後90日の1on1を何のために、どの頻度で、何を議題に行うのか、そして記録をどう残すのかを解説します。

オンボーディング期の1on1とは

オンボーディング期の1on1とは、入社後90日の間、上司と新人が週1回・固定の予定で行う対話で、進捗の確認より「困りごとの回収」と「期待の確認」を目的とするものです。通常の1on1が中長期の成長やキャリアを扱うのに対し、オンボーディング期の1on1は「今週、何につまずいているか」「聞いていた話と違う点はないか」という短期の適応に焦点を当てます。

なぜ目的を変える必要があるのか。入社直後の新人は、進捗を報告する材料をまだ持っていません。持っているのは「誰に聞けばよいかわからない」「これで合っているのかわからない」という困りごとと、「思っていたのと違う」というギャップです。進捗を聞かれれば「順調です」と答え、困りごとを聞かれなければ言いません。組織社会化研究(Bauer et al., 2007)が定着の要因として挙げる「役割の明確さ」「自己効力感」「社会的受容」は、この困りごととギャップが解消されて初めて育ちます。

通常の1on1とオンボーディング期の1on1の違い

項目 通常の1on1 オンボーディング期の1on1
目的 中長期の成長、キャリア、業務の相談 困りごとの回収、期待とのギャップの確認、手応えの言語化
頻度 隔週〜月1回 週1回(固定の予定)
長さ 30〜60分 15〜30分
主な問い 「最近どう?」「今後どうしたい?」 「今週、誰に聞けばいいかわからなかったことは?」「聞いていた話と違う点は?」
記録 本人と上司の間 新人・上司・人事で共有
期間 継続 入社後90日(以降は通常の1on1に移行)

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1on1が「進捗確認」になると何が起きるか

1on1が進捗確認になると、新人は本音を言わなくなります。進捗を聞かれる場は「評価される場」であり、新人は「できていない」と思われたくないため、困りごとを隠して「順調です」と答えます。上司は「順調」を聞いて安心し、問題が表面化するのは新人が「辞めます」と言ったときです。

もう一つの弊害は、上司の側にあります。進捗確認型の1on1は、上司にとって「部下の仕事を管理する場」になり、新人の状態を知る場にはなりません。上司は「順調」という報告を積み重ね、ある日突然の退職に「兆候はなかった」と言います。兆候はあったのですが、それを聞く問いがなかったのです。

進捗確認型の1on1と、困りごと回収型の1on1

進捗確認型

  • 「今週のタスクはどこまで進んだ?」から始まる
  • 新人は「順調です」「特にないです」と答える
  • 上司は安心し、困りごとは表に出ない
  • 問題が発覚するのは退職の申し出のとき

困りごと回収型

  • 「今週、誰に聞けばいいかわからなかったことは?」から始まる
  • 新人は具体的な場面を話し、相談先や任せ方が見直される
  • ギャップが早い段階で言葉になり、対処できる課題に変わる
  • 記録が共有され、上司が忙しい時期にも人事が気づける

若年就業者の組織適応を研究した尾形真実哉は、上司からの支援が新人のリアリティ・ショックの解消に果たす役割を分析し、上司との関わりの質が新人の適応を左右することを示しています(尾形真実哉『若年就業者の組織適応』白桃書房, 2019)。週1回の1on1は、この「上司からの支援」を偶然に任せず、制度として保証する場です。

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90日の1on1の組み立て

オンボーディング期の1on1は、90日のフェーズに合わせて議題の重心を変えます。初週は「期待とのギャップの確認」、導入フェーズは「相談先と業務の全体像」、適用フェーズは「任せた仕事の手応え」、自律フェーズは「次の90日」です。

90日の1on1の流れ:初週のギャップ確認から、毎週の困りごと回収、フェーズの節目の振り返りへ
90日の1on1の流れ:初週のギャップ確認から、毎週の困りごと回収、フェーズの節目の振り返りへ

フェーズ別の1on1の議題の型

時期 中心の議題 具体的な問い
初週 期待とのギャップ 「入社前に想像していたことと、実際に違ったことは?」「今、誰に聞けばいいかわからないことは?」
導入(〜30日) 相談先と全体像 「今週、聞くのをためらったことは?」「担当業務の全体像を自分の言葉で説明できる?」
適用(〜60日) 任せた仕事の手応え 「先週任せた仕事で、うまくいったこと・迷ったことは?」「次に任せる仕事の大きさは、これでよい?」
自律(〜90日) 次の90日 「一人で回せると感じる業務と、まだ不安な業務は?」「次の90日で目指したいことは?」
毎週共通 困りごとの回収 「今週、困ったことは?」「聞ける相手はいた?」「先週の困りごとはどうなった?」

議題の型があると、上司は「何を聞けばよいか」に迷わず、新人は「何を話せばよいか」がわかります。「最近どう?」という開いた問いは、関係ができてからは有効ですが、入社直後の新人には答えにくい問いです。「今週、聞くのをためらったことは?」のように場面を限定した問いのほうが、具体的な答えが返ってきます。

フェーズの節目——30日・60日・90日——の1on1は、通常の週次より少し長く取り、そのフェーズを振り返って次のフェーズのゴールを一緒に決めます。90日目は評価の場ではなく、「次の90日で何を目指すか」を新人が自分の言葉で語れるかを確かめる場です。ここで語れるなら、自律フェーズは機能したと判断できます。

「特にないです」で終わらせない3つの聞き方

第一に、場面を限定する。「困ったことは?」ではなく「今週、誰に聞けばいいかわからなかったことは?」と聞きます。第二に、先週の困りごとを追う。「先週話していた○○はどうなった?」と聞くと、新人は「ちゃんと覚えていてくれた」と感じ、次の困りごとを話しやすくなります。第三に、上司側から先に話す。「自分が新人のとき、この時期は○○で困った」と話すと、困りごとを話すことの心理的な安全性が上がります(Edmondson, 1999)。

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記録を残し、共有する

1on1の記録は、新人・上司・人事の三者で見られる場所に残します。書くのは「困りごと」「対処したこと」「次回までの確認事項」の3点で十分で、長い議事録は要りません。

1on1の記録の3項目

  • 困りごと:今週出た困りごとと、聞ける相手がいたかどうか
  • 対処:相談先の再確認、任せる仕事の調整など、その場で決めたこと
  • 次回:次の1on1で確認すること(先週の困りごとの追跡)

記録を共有する目的は、上司が忙しい時期に1on1が途絶えたり、新人の困りごとが放置されたりしたときに、人事が気づいて手を打つためです。監視ではなく安全網であることを、新人にも上司にも伝えます。「1on1が2週間実施されていない」「困りごとが3週連続で同じ」といった状態が人事に見えれば、離職の意思が固まる前に介入できます。日本で仕事に熱意を持つ社員が5%にとどまる状況(Gallup「State of the Global Workplace 2023」)を変えるのは、大がかりな制度ではなく、こうした週1回の対話が途絶えない仕組みです。

1on1は上司との縦の関係であり、新人が「評価される相手」に言いにくい困りごともあります。そのためにバディという評価しない相談相手を並行して用意します。1on1で扱う期待とのギャップの正体はリアリティ・ショックとはで、90日全体の設計は最初の90日で定着は決まるで解説しています。onbx(WellColab が提供するオンボーディング基盤)は、週次1on1を90日ジャーニーの固定タスクとして組み込み、フェーズ別の議題の型と記録を新人・上司・人事で共有することで、1on1が途絶えず、困りごとが放置されない状態を仕組みで保ちます。

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よくある質問

Q

1on1の頻度は週1回でないとだめ?

A

入社後90日は週1回を推奨します。隔週になると、困りごとが2週間放置される期間ができ、離職の意思が固まる時期(入社後1〜2ヶ月)に間に合いません。15分でも構わないので、頻度を優先してください。90日を過ぎたら隔週〜月1回に移行します。

Q

上司が忙しくて時間が取れない場合は?

A

15分に短縮しても、固定の予定を守ることを優先します。「時間があるときに」は繁忙期に必ず途絶えます。経営や人事が「新人の定着」を上司の評価に含め、1on1の時間を業務として保証することが、根本的な対策です。

Q

新人が「特にないです」としか言わない場合は?

A

問いを場面で限定します。「困ったことは?」ではなく「今週、誰に聞けばいいかわからなかったことは?」「先週任せた仕事で迷った場面は?」と聞きます。それでも出ない場合は、上司が自分の新人時代の困りごとを先に話すと、話すことの安全性が上がります。

Q

記録には何を書けばよい?

A

「困りごと」「対処したこと」「次回確認すること」の3点です。議事録のように会話を書き起こす必要はありません。記録の目的は「上司が忙しい時期にも新人が放置されない」ことであり、そのために必要な最小限で十分です。

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さいごに

オンボーディング期の1on1は、進捗を確認する場ではなく、困りごとを回収し、期待とのギャップを言葉にし、手応えを確かめる場です。週1回15〜30分、固定の予定で、フェーズに応じた議題の型を持ち、記録を三者で共有する。この3つが揃えば、「特にないです」で終わる1on1はなくなり、離職の意思が固まる前に手を打てるようになります。新人のやる気を支える関わり方は自己決定理論(SDT)とはを、孤立を防ぐ接点の設計は新人はなぜ孤立するのかをあわせてご覧ください。

執筆者

WellColab

AI自律型オンボーディングプラットフォーム onbx を開発・提供する株式会社WellColab。

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