
早期離職 とは
入社後、比較的短い期間——一般に3年以内、特に1年以内——で離職すること。新卒では「3年3割」として知られる。
早期離職は、日本の人事が長く抱えてきた課題で、「3年3割」(新卒の3割が3年以内に辞める)という言葉で知られています。しかし、この数字を年次ごとに分解すると、対処の焦点が見えてきます。この項目では、定義と統計、主な原因、コスト、防ぐための設計を整理します。
意味と統計
早期離職とは、入社後、比較的短い期間で離職することです。厚生労働省の統計では「3年以内」が基準になっており、新卒については「新規学卒就職者の離職状況」として毎年公表されています。
新規学卒就職者の3年以内離職率(2021年3月卒、2024年公表)
| 区分 | 3年以内離職率 | 内訳(大学卒) |
|---|---|---|
| 大学卒 | 34.9% | 1年目12.2%、2年目11.6%、3年目11.1% |
| 短大等卒 | 44.6% | — |
| 高校卒 | 38.4% | — |
| 中学卒 | 50.5% | — |
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」
事業所規模別では、5人未満59.1%、5〜29人52.7%、30〜99人42.4%、100〜499人35.2%、500〜999人32.9%、1,000人以上28.2%(大学卒)と、規模が小さいほど高くなります。
大卒の内訳を見ると、1年目・2年目・3年目がほぼ同じ規模です。ただし、離職の「意思」が固まる時期はさらに早く、入社直後の数か月に集中します。新入社員の約2割が最初の45日以内に離職するという海外の調査(Wynhurst Group)もあり、「3年3割」の相当部分は、入社1年以内、特に最初の90日で決まっていると考えられます。
主な原因
早期離職の原因は、入社直後に集中して起きる4つの問題で説明できます。第一に、期待と現実のギャップ——リアリティ・ショック。特に評価と組織に関するショックは離職意思に直結します。第二に、役割の曖昧さ。何をすべきか、どう評価されるかがわからない状態は、ストレスと不満を生みます。第三に、孤立。困ったときに聞ける相手がおらず、職場に受け入れられている感覚がない。第四に、上司との関係。仕事で辛いときに相談できる上司の存在は、会社への愛着を決める最も強い要因の一つです(尾形真実哉『若年就業者の組織適応』白桃書房, 2019)。
2年目・3年目の離職には別の構造があります。1年目の経験で会社と仕事が見えてきたからこそ生じる理想と現実の擦り合わせ(2年目の憂鬱)、3年目の単調感と「この会社でしか通用しない」という危機感です。1年目の手厚い支援が途切れることが、2年目以降の離職の一因になります。
離職のコスト
離職1人あたりのコストは年収の約21%という推計があります(Boushey & Glynn, 2012)。採用費、研修費、立ち上がり期間の人件費、引き継ぎと欠員期間の損失、周囲への影響を含めた数字です。年収400万円の新卒が1年で辞めれば約80万円、10人なら約800万円が失われる計算になり、早期離職の防止は「コスト削減」ではなく「投資の保全」として経営に説明できます。
防ぐための設計
早期離職の原因が入社直後に集中している以上、防ぐ設計も入社直後に集中させます。入社前に現実を具体的に伝える(RJP・プリボーディング)。初週に役割と「聞ける相手」を渡す。上司の週次1on1を最初の90日は業務として確保する。30日・60日・90日のサーベイで役割の明確さ・自己効力感・受容を測り、下がった時点で動く。そして90日で終えず、2年目まで頻度を落として続ける。
これらはオンボーディングの設計そのものです。「防げる離職」——入社直後の設計不足による離職——と、「防げない離職」——本人の適性や事情による離職——を分け、前者を確実に減らすことが、早期離職対策の実際です。統計と設計の詳細は早期離職、指標としての扱いは定着率・離職率で解説しています。
「3年3割」は昔からですか?
大卒の3年以内離職率は、1990年代後半から30%台で推移しており、大きくは変わっていません。「最近の若者は辞めやすい」というより、構造的に3割前後が続いている状態です。変わったのは、離職に対する社会の見方と、転職市場の流動性です。
早期離職は本人の問題ではないのですか?
本人の適性や事情による離職はあります。しかし、入社直後の設計——現実の伝え方、役割の付与、聞ける相手、上司の関わり——で防げる離職も多く、研究はその要因を具体的に示しています。「本人の問題」で処理すると、同じ理由の離職が繰り返されます。
中途採用の早期離職も同じ構造ですか?
基本は同じですが、中途は「前職との比較」によるギャップが大きく、特に裁量や意思決定のスピードなど組織面のショックが多く見られます。また「経験者だから」と受け入れの設計が省かれることが、新卒以上に早期離職を生みます。



