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用語集 経営・組織

人的資本開示とは

じんてきしほんかいじ / Human Capital Disclosure

2023年3月期から義務化。「測れるもの」を並べる開示と、戦略とつながる開示の違い

公開日2026/09/20

人的資本開示 とは

企業が人材への投資と成果に関する情報——育成方針、社内環境整備方針、その指標と目標——を、投資家や社会に向けて公表すること。

人的資本開示は、人的資本経営を「説明責任」に変えた制度です。開示が義務化されたことで、多くの上場企業が人材に関する数値を集め始めましたが、「測れるものを並べる」開示と「戦略とつながる」開示の差は大きいものです。この項目では、定義と制度、開示項目、ISO 30414、開示の質を分ける点、オンボーディングとの関係を整理します。

意味と制度

人的資本開示とは、企業が人材への投資と成果に関する情報——人材育成の方針、社内環境整備の方針、それらに関する指標と目標——を、投資家や社会に向けて公表することです。

日本では、金融庁の企業内容等の開示に関する内閣府令の改正により、2023年3月期以降の有価証券報告書で、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の中に人的資本の記載が求められるようになりました。人材育成方針と社内環境整備方針、およびそれらに関する指標の内容と目標・実績を記載します。あわせて、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差の3指標が「従業員の状況」として開示対象になりました。

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開示項目と ISO 30414

国際的には、ISO 30414(2018)が人的資本報告のガイドラインとして、11領域・58項目を示しています。コンプライアンスと倫理、コスト、ダイバーシティ、リーダーシップ、組織文化、健康・安全、生産性、採用・異動・離職、スキルと能力、後継者計画、労働力の利用可能性です。

人的資本開示の主な領域と指標の例

領域 指標の例 オンボーディングとの関係
採用・異動・離職 離職率、定着率、採用にかかる期間・コスト 定着率は受け入れの成果指標
スキルと能力 研修時間、研修費用、リスキルの人数 新人の最初の90日の育成投資
組織文化 エンゲージメントスコア、eNPS 土台は入社直後に作られる
ダイバーシティ 女性管理職比率、中途採用比率、外国人比率 多様な人材の受け入れ設計
生産性 従業員1人あたり売上・利益 立ち上がりまでの期間の短縮
健康・安全 労働時間、休職率 新人のコンディションの把握

日本の開示義務は ISO 30414 の全項目を求めるものではありませんが、指標を選ぶ際の参照枠として広く使われています。

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開示の質を分ける点

開示で問われるのは、数値そのものより「戦略との一貫性」です。「研修時間が年間○時間」という数字だけでは、それが多いのか少ないのか、なぜその研修なのかがわかりません。投資家が見るのは、経営戦略が必要とする人材像に対して、どのギャップを、どの投資で埋め、その進捗をどの指標で追っているか——という一連の説明です。

「測れるもの」(研修時間、有給取得率)を並べる開示は、義務は満たしても評価されません。「戦略に必要なギャップが埋まっているか」を測る指標を選び、目標の根拠を説明する開示が、人的資本経営の実態を示します。人材版伊藤レポートの3つの視点——連動、ギャップの定量把握、文化への定着——は、この説明の骨組みになります。

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オンボーディングとの関係

定着率・離職率は、開示の代表的な指標です。新卒3年以内離職率、入社1年後定着率は、投資家が採用投資の回収を見る材料になります。そして、これらの指標を改善する直接の手段がオンボーディングです。

開示指標として定着率を置くなら、その改善の打ち手として、最初の90日の設計、30・60・90日のサーベイ、上司の1on1実施率といった先行指標を持ち、「定着率の目標に対して、これらの取り組みで到達する」と説明できる状態が、戦略とつながる開示です。開示のために数値を集めるのではなく、経営が定着を指標として持ち、現場の受け入れが動き、その結果が開示に現れる——この順序が本来の姿です。経営が定着を持つ意味はオンボーディングは経営の仕事で解説しています。

Q

人的資本開示は非上場企業にも関係ありますか?

A

義務はありませんが、採用市場では求職者が企業の定着率や育成方針を見るようになっており、自主的な開示は採用力に関わります。また、取引先や金融機関が人的資本の情報を求める動きもあります。

Q

開示する指標はいくつ選べばよいですか?

A

数より一貫性です。経営戦略から導かれる人材像に対して、ギャップの進捗を示す指標を数個選び、目標の根拠を説明できることが重要です。多くの指標を並べても、戦略との関係が説明できなければ評価されません。

Q

定着率を開示すると、低い場合に不利になりませんか?

A

数値の高低より、目標と打ち手の説明が見られます。「定着率が低い」事実を開示し、原因(入社直後の受け入れ)と打ち手(90日設計、先行指標)と目標を示す企業は、数値を隠す企業より信頼されます。

執筆者

WellColab

AI自律型オンボーディングプラットフォーム onbx を開発・提供する株式会社WellColab。

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