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用語集 基礎・実践

ストレッチ(背伸びの課題)とは

すとれっち / Stretch Assignment

できることの繰り返しでは成長しない。ただし土台なしの修羅場はつぶれる

公開日2026/09/20

ストレッチ(背伸びの課題) とは

まだ持っていない知識やスキルを必要とする、少し背伸びが要る課題に挑戦すること。経験から学ぶ力の一要素。

ストレッチ(stretch)は、「背伸び」を意味します。手を伸ばせば届くかどうか、という高さの課題に取り組むことが成長の条件であるという考え方で、経験学習の研究者である松尾睦が「経験から学ぶ力」の3要素の一つとして位置づけています。この項目では、定義と背景、なぜ必要か、3つの方略、新人への適用を整理します。

意味と背景

ストレッチとは、まだ持っていない知識やスキルを必要とする、少し背伸びが要る課題に挑戦することです。松尾睦は、経験から学ぶ力を「ストレッチ」(問題意識を持ち、挑戦的で新規性のある課題に取り組む姿勢)、「リフレクション」(行為の最中と後に内省する)、「エンジョイメント」(仕事に意味と面白さを見いだす)の3つに整理し、ストレッチとリフレクションを自転車の両輪、エンジョイメントをつなぐチェーンに例えています(松尾睦『職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門』ダイヤモンド社, 2011)。

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なぜストレッチが必要か

未経験の仕事や難しい課題に取り組むと、新たな知識・スキルを獲得する必要が生じます。反対に、慣れた仕事やできることだけの繰り返しでは、新しい能力を身につける必要がなく、成長は期待できません。マネジャーの成長のきっかけとなった経験を調べた研究では、初めての仕事、異動による不慣れな仕事、初めての管理職、事業の立て直しなど、本人にとって新規性の高い仕事が挙げられています(一皮むけた経験)。

熟達研究も同じことを示します。学びが起きる条件は「適度に難しく明確な課題」であり(よく考えられた実践)、確実にできる課題だけでは熟達は止まります。

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3つの方略:足場をつくる

ただし、挑戦の機会は自分でつくるものだけではなく、優れたマネジャーは他者から挑戦的な仕事を任せてもらえる準備もしていました。松尾(2011)はこの準備と挑戦の進め方を3つの方略に整理し、「挑戦のための足場づくり」とまとめています。

ストレッチの3つの方略

方略 内容
挑戦するための土台を作る 本格的な挑戦に先立ち、地道な業務を積み重ねて基礎力をつける 図面作業や計算の反復で、数字の意味を身体的な感覚として理解した技術者
周囲の信頼を得て挑戦を呼び込む 目の前の仕事の質を高めて信頼を得ることで、次の難しい仕事を任される 当初は疑問視された報告書を継続して作り、評価と新たな依頼につなげたマネジャー
できることをテコにして挑戦を広げる 苦手への挑戦だけでなく、できることを足がかりに範囲を広げる。難しい課題は分割する 人事から販売部門へ移り、既存の営業と競うのではなく購買状況の分析で役割をつくった

土台なしの挑戦には危険もあります。IT技術者の調査では、入社6〜10年目に難しい仕事を経験して成長した人は、最初の5年間に地力をつけていたことが示されており、松尾(2011)は、大きなストレッチの前に小さなストレッチを重ねること、土台がないまま修羅場を経験するとつぶれてしまう危険を指摘しています。

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新人への適用

新人のストレッチは、「懸命に手を伸ばせば届く」難易度に調整します。最初の30日は土台づくり——一人で完結できる小さな仕事を確実にこなし、周囲の信頼を得る。60日で少し背伸びが要る仕事を1つ渡し、90日で自分で決める範囲のある仕事へ。難しい仕事は因数分解して、できる部分から任せます。

「成長できる経験が与えられない」と感じる若手には、現在の仕事の質と、任せてもらえるだけの信頼を得ているかを考える必要があると松尾(2011)は述べています。一方で、組織の側にも責任があります。若年就業者の研究では、自分の判断で取り組める職務自律性と、重要だと思えるタスク重要性が、若手の主体的な行動を引き出すことが示されています(尾形真実哉『若年就業者の組織適応』白桃書房, 2019)。ストレッチは本人の姿勢と、組織の仕事の渡し方の両方で成り立ちます。ストレッチで得た手応えは自己効力感を育て、次の挑戦の土台になります。

Q

新人にいきなり難しい仕事を任せるのはストレッチですか?

A

土台がなければストレッチではなく修羅場です。最初の30日で小さな仕事を確実にこなす土台を作り、そのうえで少し背伸びが要る仕事を渡す順序が要ります。大きな課題は分割し、できる部分から任せます。

Q

挑戦する機会がない職場ではどうすればよいですか?

A

今の仕事の質を上げることが、挑戦を呼び込む入口です。松尾(2011)が紹介する事例では、日常の仕事への集中と創意工夫、小さな成果が、より大きな挑戦への入口になっています。偶然の機会を待つより、今の仕事で成果を出して機会を引き寄せる考え方です。

Q

ストレッチと自己効力感はどう関係しますか?

A

ストレッチを乗り越えた経験(達成経験)は、自己効力感の最も強い源泉です。逆に、自己効力感がある程度なければ、ストレッチに踏み出せません。小さなストレッチと達成経験を交互に積むことで、両方が育ちます。

執筆者

WellColab

AI自律型オンボーディングプラットフォーム onbx を開発・提供する株式会社WellColab。

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