お役立ち記事
資料請求・お問い合わせお問い合わせ
用語集 心理・エンゲージメント

アンラーニングとは

あんらーにんぐ / Unlearning

「学びほぐし」。中途入社者と経験豊富な人ほど必要で、ほど難しい

公開日2026/09/20

アンラーニング とは

これまでに身につけた知識・スキル・持論のうち、新しい環境で通用しなくなったものを意識的に手放し、学び直すこと。

アンラーニング(unlearning)は、「学習棄却」「学びほぐし」と訳され、新しい環境への適応と、持論の更新を説明する概念です。中途入社者の受け入れ、異動者の適応、管理職の役割転換で、必ず問題になります。この項目では、定義と背景、なぜ難しいか、誰に必要か、支援の方法を整理します。

意味と背景

アンラーニングとは、これまでに身につけた知識・スキル・持論のうち、新しい環境で通用しなくなったものを意識的に手放し、学び直すことです。組織論では、組織が古い知識やルーティンを捨てることの重要性として論じられ(Hedberg, 1981)、個人のレベルでは、経験を通じて形成された持論やノウハウの固定化を問い直す実践として扱われます。

経験学習の研究者である松尾睦は、自分なりの持論やノウハウは経験を通じて形成されるが、その固定化が成長を止めることもあると指摘し、仕事や問題の本質を考え、自分が当然としている前提を問い直すことで異なる考えや行動を受け入れる「内省的実践」(Schön, 1983)を、持論を更新する「学びほぐし」として紹介しています(松尾睦『職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門』ダイヤモンド社, 2011)。

▲ 目次に戻る

なぜ難しいか

アンラーニングが難しいのは、手放すべきものが「成功体験」だからです。前職で成果を出したやり方、これまで評価されてきた判断基準は、本人にとって正しさの証拠を持っています。新しい環境で通用しなくても、「やり方が悪いのではなく環境が悪い」と解釈するほうが心理的に楽です。

もう一つの理由は、内省が「持論の確認」になることです。経験が豊富な人ほど、経験を振り返るときに既存の枠組みで解釈し、枠組み自体を疑いません。リフレクションが深まらないのではなく、深まった結果として持論が強化されるという逆説があります。批判にオープンになり、自分が間違っている可能性を検討する「情熱的謙虚さ」が、アンラーニングの条件です。

アンラーニングが必要になる場面

場面 手放すべきもの 起きやすい問題
中途入社 前職の仕事の進め方、意思決定の速度感、暗黙のルール 「前職ではこうだった」の持ち込み。周囲との摩擦、または遠慮して動けない
部署異動 前部署の基準、人間関係の前提 前部署との比較。「知っているはず」と放置される
管理職への昇進 プレイヤーとしての成功パターン、「自分でやる」習慣 プレイヤーのまま管理職を務め、部下が育たない
事業の転換 既存事業で通用した専門性、顧客の見方 過去の成功体験に基づく判断が、新しい事業で通用しない

▲ 目次に戻る

中途入社者の90日:「捨てる」ではなく「仕分ける」

中途入社者のアンラーニングでよくある誤りは、「前職のやり方は忘れてください」と全否定することです。前職の経験は、中途を採用した理由そのものであり、すべてを捨てさせれば採用の意味がなくなります。同時に、そのまま持ち込めば摩擦を生みます。

必要なのは「仕分け」です。前職のやり方のうち、この会社でも通用するもの、通用しないもの、試す価値があるものを、最初の90日で上司と一緒に分けます。最初の30日は型を覚え、「前職ではこうだった」という気づきを1on1で出し、60日以降に「試す価値があるもの」を小さく試す。この順序があれば、中途の経験は組織の改善につながり、アンラーニングは「捨てる痛み」ではなく「仕分ける作業」になります。中途採用者の研究でも、前職の経験を活かすことと新しい組織に適応することの両立が、定着と活躍の条件として論じられています(尾形真実哉『中途採用人材を活かすマネジメント』生産性出版, 2022)。異動者についても同じ構造がクロスボーディングの項目で扱われています。

▲ 目次に戻る

支援の方法

アンラーニングは本人の意思だけでは進みません。上司にできることは3つあります。第一に、「何が違うか」を言語化して渡すこと。新しい環境の基準・手順・暗黙のルールを言葉にしなければ、本人は自分の持論のどこが通用しないかに気づけません。第二に、仕分けの場を設けること。「前職ではこうだった」を否定せず、通用する・しない・試す価値がある、の3つに一緒に分ける1on1。第三に、試す機会を渡すこと。「試す価値がある」に分類したものを、小さく実験させる。試して通用しなかった経験が、最も確実なアンラーニングになります。経験学習サイクルの「適用」の段階が、持論の更新を完成させます。

Q

アンラーニングは「忘れる」ことですか?

A

違います。知識やスキルを消すことはできません。アンラーニングは、持論の前提を問い直し、新しい環境で通用しなくなった部分を意識的に置き換えることです。通用する部分は残し、通用しない部分だけを更新します。

Q

中途入社者に「前職のやり方は忘れて」と言うのは正しいですか?

A

勧めません。前職の経験は採用した理由そのものです。全否定ではなく、通用するもの・しないもの・試す価値があるものを最初の90日で一緒に仕分けることが、中途の経験を活かしながら適応させる方法です。

Q

経験豊富な人ほどアンラーニングが難しいのはなぜですか?

A

手放すべきものが成功体験だからです。成果を出してきたやり方には正しさの証拠があり、通用しないときも「環境が悪い」と解釈しやすい。また、内省が既存の枠組みでの解釈になり、枠組み自体を疑わなくなります。批判にオープンになる姿勢と、試して確かめる機会が要ります。

執筆者

WellColab

AI自律型オンボーディングプラットフォーム onbx を開発・提供する株式会社WellColab。

この執筆者の記事を見る →

用語集の一覧へ戻る