
新人が辞めると言ってきた週、店長はその新人と一度もシフトが重なっていなかった。様子がおかしいと聞いたのは、辞める数日前だった。シフト勤務の現場では、珍しくない話です。
店舗、病院、介護施設、工場、コールセンター。シフトで回る職場では、上司や教育担当が新人と同じ時間にいない日が、何もしなくても必ずできます。その日をどう埋めるかを、シフト表の組み方、引き継ぎに足す欄、日報を使った1on1の順に書きます。連載「職種・働き方別オンボーディング」の第2回です。
会えない日が週に2〜3日ある
シフト勤務が中心の業界は、離職率が高めです。新規大卒者の3年以内離職率は全体で34.9%ですが、シフト勤務が中心の宿泊業・飲食サービス業では56.6%、小売業では41.9%、医療・福祉では41.5%に達します(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」2024年公表、2021年3月卒業者)。
新規大卒就職者の3年以内離職率(シフト勤務が中心の産業)
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(2024年公表、2021年3月卒業者)
業界の体質で片づけたくなりますが、原因はもっと単純です。新人の定着を左右する役割の明確さ、自己効力感、周囲から受け入れられている感覚(Bauer et al., 2007)は、上司や先輩との毎日の接点で少しずつ満たされていきます。勤務時間が固定の職場なら、その接点は毎日あります。シフト勤務では、上司が休みの日、上司が早番で新人が遅番の日、新人が夜勤の日があり、接点がゼロの日が週に2〜3日はできてしまいます。
接点がゼロの日、新人は質問をため込み、聞けないまま自己流で進めるか、手を止めます。上司は様子を見ていないので、口数が減る、質問が減る、遅刻が増えるといった辞める前の変化に気づけません。会社への愛着をいちばん強く左右するのは、つらいときに相談に乗ってくれる上司がいるかどうかでした(尾形真実哉『若年就業者の組織適応』白桃書房, 2020)。シフト勤務では、そのつらいときに上司がいないことが多いのです。
上司がいなくても、誰かが見ている日にする
発想を変えます。上司と会える日に話すのではなく、会えない日にも誰かが新人を見ている状態を作ります。
「誰も新人を見ていない日」をなくす手立て
| No. | 設計 | 内容 | 誰が |
|---|---|---|---|
| 1 | 最初の30日は同シフト | 新人と「聞ける相手」(教育担当またはバディ)のシフトを、最初の30日はできる限り重ねる。上司でなくてよい。重ねられない日は「その日の聞ける相手」を別に指名する | シフト作成者 |
| 2 | 引き継ぎに新人の1行 | 業務の引き継ぎノート(紙・電子どちらでも)に、新人の様子を1行書く欄を足す。「今日できたこと・困っていたこと・明日誰が見るか」。次のシフトの責任者が読む | その日の責任者 |
| 3 | 非同期の1on1 | 新人が日報(3行でよい)を書き、上司が翌日までに返信する。会えない週も「見ている」ことが伝わる。会える日に15分の対面を足す | 上司 |
| 4 | 週次サーベイ | 「今週、困ったときに聞ける相手はいましたか」「役割はわかっていますか」の2問。「いなかった」が出たらシフトを見直す | 人事+シフト作成者 |
いちばん効くのは1つ目の同シフトです。バディと90日で8回以上会った新人の97%が「早く戦力になれた」と答えたのに対し、1回しか会わなかった新人では56%でした(HBR, 2019)。シフト勤務では、この回数がシフト表で決まってしまいます。同じシフトに組まなければ、ゼロです。バディ制度を入れるなら、誰をバディにするかより、シフトをどう重ねるかに手間をかけてください。
最初の30日は、接点からシフトを組む
シフト勤務の受け入れを実際に設計しているのは、人事ではなくシフトを作る人(店長、師長、班長)です。新人の最初の30日だけは、業務の都合より先に、誰と重なるかでシフトを組みます。
新人の最初の30日のシフト例(早番・遅番の店舗)
| No. | 週 | 新人のシフト | 聞ける相手 | 上司との接点 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 1週目 | 聞ける相手と完全に同じ(早番なら早番) | 教育担当A(全日同シフト) | 初日30分、週末15分(対面) |
| 2 | 2週目 | 聞ける相手と同じ。休みも合わせる | 教育担当A(全日同シフト) | 日報への返信(毎日)+対面15分 |
| 3 | 3週目 | 遅番を2日入れる。その日は別の聞ける相手 | 教育担当A(3日)+先輩B(遅番2日) | 日報への返信+対面15分 |
| 4 | 4週目 | 通常のシフトに近づける。ただし「聞ける相手がいない日」は作らない | A・Bのどちらかが必ず同シフト | 30日面談(対面30分) |
守るのは「聞ける相手がいない日を作らない」ことだけです。上司が同じシフトにいる必要はありません。上司は日報への返信と、会える日の15分で、見ていることを伝えます。3週目から先輩Bを入れるのは、新人がAにしか聞けない状態を避けるためです。Aが休みの日にBがいれば、質問は止まりません。
新人がぶつかる予想外の出来事に、その場で意味を教えてくれる人がいるかどうかで、なじみ方は変わります(Louis, 1980)。シフト勤務では、それが起きたシフトの中にその人がいないと意味がありません。翌日の上司では遅いのです。だから、その日の聞ける相手を必ず決めておきます。
申し送りに、新人の欄を1つ足す
シフトで回る現場には、たいてい引き継ぎの仕組み(ノート、申し送り、チャット)がもうあります。新しい仕組みはいりません。そこに新人の欄を足すだけで、誰も見ていない日は減ります。
引き継ぎに足す、新人の3行
- 今日できたこと:「レジを一人で締められた」「巡回を単独で回った」。次のシフトの人が「そこまでできる」と知って接する
- 困っていたこと・様子:「クレーム対応で固まった」「今日は口数が少なかった」。次のシフトの人が声をかける材料
- 明日誰が見るか:「明日の早番は先輩Bが聞ける相手」。新人にも同じことを伝えておく
とくに3行目を抜かさないでください。明日は誰に聞けばいいかが前の日にわかっていれば、新人の朝の不安はかなり減ります。引き継ぎは、業務を渡すためのものであると同時に、新人の様子を次の人に渡すためのものでもあります。
会えない週は、日報への返信が1on1になる
シフトが合わない週、上司が新人を見る手段は日報への返信です。新人は退勤前に3行(今日やったこと・困ったこと・明日聞きたいこと)を書き、上司は翌日までに返信する。返信は長くなくてよく、「見た」「それは先輩Bに聞いて」「その判断で合っている」で十分です。
日報と週次サーベイの違いはデイリー・ウイークリーのサーベイ設計で扱いましたが、シフト勤務では日報が「非同期の1on1」の役割を担います。対面の1on1(設計はこちら)は、会える日に15分。「今週の手応え」と「次に変えること」だけを話し、日報で拾えなかった感情の部分をここで聞きます。
週次サーベイは、ここまでの手立てが効いているかを確かめるために使います。「今週、困ったときに聞ける相手はいましたか」に「いなかった」と答えた週は、シフト表のどこかで接点が切れています。答えを見た人事とシフトを作る人が、翌週のシフトに聞ける相手を足す。サーベイの結果がそのままシフトの手直しにつながると、受け入れの質が店長個人の気配りに頼らずに済みます。たとえば、3週目に遅番を入れた新人が「聞ける相手がいなかった」と答えたら、遅番の先輩Bへの引き継ぎが機能していなかったのだとわかり、翌週は先輩Bとの初日を早番で重ねてから遅番に入る、といった修正ができます。
業界ごとの事情は、製造業の交代勤務、店舗の早番・遅番、医療・介護の三交代でそれぞれ違いますが、「シフト表に新人の接点を書き込む」という考え方は、どの現場でも変わりません。
シフト勤務の受け入れ:業務優先のシフトと、接点優先のシフト
業務優先のシフト
- 新人のシフトは人手の穴で決まる。教育担当と重なるかは偶然
- 引き継ぎは業務のこと(在庫・患者・設備)だけ。新人の様子は書かれない
- 1on1は「会えたときに」。会えない週は何も起きない
- 辞める兆候は、同シフトの誰かが気づいて上司に伝えるまで届かない
接点優先のシフト
- 最初の30日は「聞ける相手」と同シフト。いない日は別の相手を指名
- 引き継ぎに新人の3行。次のシフトの責任者が読んで声をかける
- 日報への返信を毎日。会える日に15分の対面
- 週次サーベイで「聞ける相手がいたか」を見て、いなかった週はシフトを直す
人手が足りず、新人と聞ける相手を同シフトに組めません。
「上司と同シフト」ではなく「誰か聞ける相手と同シフト」なら、組める余地は広がります。教育担当でなくても、2年目以上の先輩を「その日の聞ける相手」に指名し、新人に伝えるだけで構いません。どうしても一人になる日は、日報の返信を当日中にし、翌日の聞ける相手を前日に伝えて、「一人の日」を最小限にしてください。
新人が日報を書きません。
3行に減らしてください。「今日やったこと」「困ったこと」「明日聞きたいこと」の3行で、所要2分です。それでも書かないなら、上司の返信が遅い(書いても読まれない)ことが原因である場合が多いので、返信の期限を「翌日の始業前」に固定します。読まれている日報は続きます。
夜勤専従の新人はどうすればよいですか。
夜勤の中に「聞ける相手」を指名してください。日勤の上司が「何かあれば連絡して」では、夜勤中の質問は止まります。夜勤のリーダーやベテランをその役にし、日勤の上司は日報への返信と、月2回の対面(勤務前後の30分)で補います。夜勤明けの様子は、引き継ぎの3行で日勤側に渡します。
パートと正社員が混在するシフトでは、受け入れをどう分けますか。
分けなくてよい部分(同シフト・引き継ぎの3行・聞ける相手)と、分ける部分(到達目標の範囲・日報の頻度)があります。パートの新人にも「聞ける相手」と「明日誰が見るか」は必要です。むしろ短時間勤務ほど接点が少ないので、最初の2週間の受け入れは正社員より丁寧に設計してください。
連載:職種・働き方別オンボーディング
- 第1回フルリモートのオンボーディング|偶然の接点がゼロの前提で、接点の量と初週を設計する
- 第2回シフト勤務のオンボーディング|「誰も新人を見ていない日」をなくす、シフト表からの設計
- 第3回ハイブリッド勤務のオンボーディング|「出社したのに誰もいない」を防ぐ、出社日の設計



