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早期離職のコストはいくらか|離職1人の損失と、オンボーディングを「投資」にする計算

採用費だけでは終わらない損失の内訳と、回収までの試算

公開日2026/06/22

「新人が辞めた」——このとき企業が失うのは、求人広告費や紹介料だけではありません。研修に使った時間、先輩がOJTに割いた工数、残った社員の負担増、「あの部署は人が育たない」という評判まで含めると、損失は採用費の数倍になります。この記事では、早期離職1人あたりの離職コストを公開データから見積もり、その損失と比べたときにオンボーディングへの投資がどう回収されるかを、経営者に説明できる形で整理します。

離職コストとは何が含まれるのか

離職コストとは、社員1人が離職することで失われる採用費・教育費・生産性・周囲の負荷など、直接・間接の損失の総額です。目に見える「直接コスト」だけを数える企業が多いのですが、実際に大きいのは目に見えにくい「間接コスト」のほうです。

離職コストの内訳

区分 項目 内容
直接コスト 採用費 求人広告、人材紹介料、説明会・面接の工数
直接コスト 教育費 研修費用、教材、外部講師、研修期間中の人件費
間接コスト 指導工数 先輩・上司がOJTと1on1に使った時間
間接コスト 生産性の空白 退職から後任の戦力化までの穴、引き継ぎの不備
間接コスト 周囲の負荷 残った社員の業務増、士気の低下、連鎖離職
間接コスト 採用ブランド 「人が育たない会社」という評判、口コミ、次回採用の難化

直接コストの規模は公開データで把握できます。リクルート就職みらい研究所の「就職白書2020」によれば、新卒採用にかかる1人あたりの平均コストは93.6万円、中途採用では103.3万円です(2019年度実績)。これは求人・選考にかかる費用であり、入社後の研修費や指導工数は含まれていません。

採用1人あたりの平均コスト(2019年度)

新卒採用
93.6万円
中途採用
103.3万円

出典:リクルート就職みらい研究所「就職白書2020」

間接コストを含めた離職コスト全体の目安としては、米国の研究で「離職1人あたりのコストの中央値は年収の約21%」という推計があります(Boushey & Glynn, 2012, Center for American Progress)。年収400万円の社員なら約84万円、これに採用費を加えると、1人の早期離職で150万〜200万円規模の損失になる計算です。専門性の高い職種ほどこの比率は上がります。

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なぜ早期離職の損失は採用費で終わらないのか

早期離職の損失が採用費で終わらない理由は、離職が「1人の穴」ではなく「周囲の負荷」と「次の採用」に波及するからです。新人が辞めると、指導に時間を使った先輩は徒労感を抱き、残った社員に業務が戻ります。この負荷が次の離職を誘発する連鎖は、現場では珍しくありません。

さらに見落とされがちなのが、採用ブランドへの影響です。早期離職者は転職市場に戻り、口コミサイトや知人に「辞めた理由」を語ります。厚生労働省の調査では大卒の34.9%が3年以内に離職しており(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」2024年)、この水準を上回る企業は「定着しない会社」として認識されやすく、次回の採用コストが上がります。離職は、採用費を失うだけでなく、次の採用費を押し上げるのです。

組織社会化研究のメタ分析(Bauer et al., 2007)は、新人の定着を左右する要因として「役割の明確さ」「自己効力感」「社会的受容」を挙げています。いずれも入社後の関わりの中で形成されるもので、選考でどれだけ見極めても、入社後の設計がなければ育ちません。つまり早期離職の多くは、採用の失敗ではなく、受け入れの設計不足によって起きています(研修と受け入れ設計の違いはオンボーディングと研修の違いで整理しています)。

もう一つ、数字に表れにくいのが「生産性の空白」です。新人が辞めてから後任が入り、独り立ちするまでの間、そのポジションの成果はゼロか、周囲が肩代わりしている状態が続きます。採用に2〜3ヶ月、戦力化に3ヶ月かかるとすれば、半年分の成果が失われる計算です。この空白は損益計算書には「離職コスト」として現れませんが、現場の残業や納期遅れとして確実に発生しています。

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オンボーディングへの投資を試算する

オンボーディングの投資対効果は、「離職を何人減らせるか」を起点に試算できます。難しい計算は不要で、次の3つの数字があれば十分です。

年間の離職損失と、オンボーディング投資の回収イメージ
年間の離職損失と、オンボーディング投資の回収イメージ

1. 現状の年間損失を出す

年間の早期離職者数 × 1人あたりの離職コスト(採用費+年収の2割が目安)で、現状の損失を出します。たとえば年間5人が1年以内に離職し、1人あたり150万円と置けば、年間750万円の損失です。

2. 減らせる離職者数を仮置きする

オンボーディングの整備で離職者を何人減らせるかを仮置きします。設計の質によりますが、まず「半減」を目標に置くのが現実的です。5人が2〜3人になれば、年間375万円前後の損失が消えます。

3. 投資額と比べる

オンボーディングの整備にかかる費用(設計の工数、バディ・上司の時間、基盤の利用料)を年額で見積もり、削減できる損失と比べます。年額200万円の投資で375万円の損失が消えるなら、1年以内に回収できる計算です。

試算の3ステップ

  • 年間の早期離職者数 × 1人あたり離職コスト(採用費+年収の約2割)で現状の損失を出す
  • 「離職を半減」を目標に、減らせる損失を仮置きする
  • 整備にかかる年額と比べ、回収期間を出す(多くの場合1年以内)

この試算には、間接コストの多くが含まれていません。指導した先輩の徒労感、残った社員の負荷、採用ブランドの毀損を加えれば、実際の効果はさらに大きくなります。逆に言えば、直接コストだけの控えめな試算で回収できるなら、投資判断としては十分に堅い、ということです。

試算を経営会議に出すときは、「離職率を下げる」ではなく「年間○○万円の損失を○○万円に減らす」と表現します。離職率は人事の指標ですが、損失額は経営の指標です。同じ事実でも、経営が判断できる単位に翻訳することで、オンボーディングの整備は予算の議題になります。

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「コスト」と見る経営と、「投資」と見る経営

オンボーディングをコストと見る経営と、投資と見る経営

コストと見る経営

  • 「新人は現場で自然に育つ」と考え、受け入れは現場任せ
  • 離職は「本人の問題」として処理し、損失を計算しない
  • 採用費を増やして穴を埋め、同じ離職を繰り返す
  • 人が育たない評判が広がり、採用コストが上がる

投資と見る経営

  • 受け入れを「最初の90日」の設計として経営が持つ
  • 離職コストを試算し、減らした分を成果として測る
  • 定着が上がった分を、採用費ではなく育成に回す
  • 「人を育てる会社」として採用ブランドが上がる

投資と見る経営に転換するとき、最初の一歩は「離職コストを数字にすること」です。数字になっていない損失は、経営会議で議題になりません。年間の離職損失が数百万〜数千万円規模であることが見えれば、オンボーディングの整備は「人事の施策」から「経営の投資判断」に変わります。定着が上がった企業は、削減できた採用費を育成やリスキリングに回し、さらに定着が上がる好循環に入ります。

この転換を後押ししているのが、人的資本の開示です。2023年3月期から上場企業には有価証券報告書での人的資本情報の開示が求められ(金融庁、2023年)、離職率や育成への投資は投資家が見る指標になりました。定着への投資は、社内の損失削減にとどまらず、外部からの企業評価にも直結する時代に入っています。

試算を実行に移すには、90日の受け入れを設計し、進捗と離職の予兆を経営が把握できる状態が必要です。onbx(WellColab が提供するオンボーディング基盤)は、90日のジャーニーと1on1の記録を新人・現場・人事で共有し、「どこでつまずいているか」を経営の判断材料にできるようにしています。

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よくある質問

Q

中小企業でもオンボーディングへの投資は見合う?

A

見合います。むしろ社員数が少ないほど1人の離職が組織に与える影響は大きく、先輩の指導時間や残った社員の負荷は相対的に重くなります。基盤の導入が難しい場合でも、90日のゴール設定・バディの固定・週次1on1の3つは費用をかけずに始められます。

Q

効果はどの指標で経営に示せばよい?

A

「入社1年以内の離職率」と「独り立ちまでの期間」が最終指標です。ただし結果が出るまで時間がかかるので、30日・60日・90日時点の新人サーベイと1on1の実施率を先行指標として毎月報告すると、投資の進捗を経営が追えます。

Q

システムを導入しなくてもできる?

A

できます。ただし、記録が個人のメモや口頭に残る状態では、担当者が変わった瞬間に止まります。まず紙やスプレッドシートで90日の設計と1on1の記録を始め、運用が回り始めた段階で基盤に載せると、属人化を防げます。

Q

投資の回収までどのくらいかかる?

A

離職コストを控えめに見積もっても、多くの場合1年以内です。年間の早期離職者を半減できれば、削減できる損失は整備費用を上回ります。回収期間を短くする鍵は、離職の多い時期(入社後1〜3ヶ月)に投資を集中させることです。

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さいごに

早期離職のコストは、採用費だけでは測れません。新卒1人の採用に約94万円、離職1人あたり年収の約2割という公開データをもとに、教育費・指導工数・周囲の負荷・採用ブランドまで含めれば、1人の早期離職は150万〜200万円規模の損失になります。一方で、オンボーディングへの投資は「離職を何人減らすか」で試算でき、多くの場合1年以内に回収できます。

離職コストを数字にし、受け入れの設計を経営の投資判断として持つこと。それが、採用に投じたコストを成果に変える出発点です。90日の具体的な組み立ては最初の90日で定着は決まるを、オンボーディングを経営基盤として捉える視点はオンボーディングは経営の仕事をあわせてご覧ください。

執筆者

WellColab

AI自律型オンボーディングプラットフォーム onbx を開発・提供する株式会社WellColab。

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